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●プロレス(G)萌え ●名作プロレス小説のアーカイブ ●作者不詳の作品も保管します。 ●イケテル画像の保存活動(笑)
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サークル室は誰もいなくてひんやりと静まり返っていた。
朋樹はよく授業が休講になると、一人でトレーニングをしていた。
パワー不足を解消するために筋肉をつけたいからだ。今日もそのためにここへやって来た。

まずTシャツとジャージのズボンに着替えて、腕立て100回、腹筋100 回、そして20分間の縄跳び。
汗をかいた頃に上半身裸になって受け身とロープワークの練習。
授業が始まる10分前にシャワーを浴びるのがいつものメニューだった。

朋樹は受け身の練習で肉体をマットに叩きつけたときに、ふと昨日の練習試合のことが思い出された。
康哉との一戦だ。

朋樹はボディーブローを使いながら、有利に試合を進めていた。
ジャンピング・パイルドライバーやワンハンド・バックブリーカー等の大技を織り込み、康哉を確実に追い詰めて行った。
康哉もスタミナには定評があったが、朋樹の気迫に満ちたファイトに完全に飲み込まれつつあった。
試合も終盤に差しかかり、朋樹のノーザンライト・スープレックスが決まった。
会心の手応えだったが、朋樹は自ら技をはずして、トップロープに登った。
振り向きざまダウンする康哉を確認して、一気にジャンプした。
ムーンサルト・ボディプレスだ。
元体操部だった朋樹が最も得意とする技だった。
空中で仰向けになって汗で光っている康哉の肉体を見た時、朋樹は勝利を確信した。

しかしその瞬間、康哉がかっと目を見開き、猿のように素早く身を翻した。
朋樹は腹からマットに激突し、悶絶した。朋樹の甘さと油断が導いた罠だった。
朋樹はふらふらと立ち上がると、すでに康哉は仁王立ちでタイミングを見計らっていた。
危険を感じて逃げようとしたが、さっきのダメージで体が言うことを聞かない。
康哉は狙いを定めて朋樹に思いっきりタックルをかました。
もんどり打って倒れる朋樹に康哉はのしかかると、あっと言う間に両脚を絡み付けていく。
足四の字固めだ。
ガッチリと極め込む康哉。
膝が今にも破壊されそうな激痛の中、朋樹はロープに手を伸ばすが、それは遥彼方にうっすらと見えるだけだった。
康哉はロープに逃げようとする朋樹を見据えマットに受身を取る。4の字が更にキツく極まった。
朋樹は4の字の激痛に耐えながら身体をよじるが、容赦のない康哉の4の字がギチギチに絞り込む。
朋樹は痙攣するようにたまらずにギブアップした。完全に康哉の作戦勝ちだった。

朋樹はその悪夢を振り払うかのように、クルリと一回バク転をして、今日の試合に向けて気合を入れながら、ランニングしてサークル室を後にした。

外へ出ると夏の太陽の刺すような日差しが照りつける。
キャンパスの中庭には噴水があり、その周辺の芝生の上では上半身裸で日光浴を楽しんでいる学生も何人か見える。
朋樹はそんな光景を横目に見ながら次の講義に遅刻しないように、足早に歩いていた。

「先輩!」

誰かが朋樹を呼んだ。声のする方を見ると、一年後輩の健の姿が見えた。
他の学生と同様、上半身裸の姿で手を振っている。

「これから授業ですか?」

「ああ」

「それより俺の練習に付き合って下さいよ。
筋トレは一人でもできるけど、試合運びとかはやっぱスパーリングを重ねないと身に付かないじゃないですか」

健はプロレスサークルの一年後輩で普段から朋樹がよく練習の面倒を見ている新人選手だ。
健はジャニーズ系の顔立ちをしており、童顔であどけなささえどこかに残るが、その身体は幼い頃から続けてきた水泳の成果か胸板は筋肉で盛り上がり、腹筋はその呼吸の度に綺麗に割れていた。

「ねぇ、スパーリングの相手して下さいよ」

「悪いな、たった今トレーニングしてきたとこなんだ。
それに俺、講義でないとやばいんだよ。ただでさえ休みがちだしさ、テストも近いだろ?」

しかし健は不満そうな顔で朋樹の表情を伺う。
そして鼻の頭に滲んだ汗を手首で拭いながらこう言った。

「じゃあ先輩、俺と賭けしましょう。俺が勝ったら先輩は俺の練習に付き合う 。
先輩が勝ったら、このまま講義に出席出来るのはもちろん、今日の昼飯おごりますよ」

朋樹は苦笑いしながら答えた。

「しょうがねえ奴だなあ。わかったよ。で、その賭けってなんだ?」

「へへへっ。こう言う時はやっぱシンプルにコレでしょ」

無邪気に笑いながら、健はジーパンのポケットから100円玉硬貨を一枚取り出した。

「表か裏か二つに一つ!先輩が先に選んでいいですよ」

「よし。じゃあ、俺は表に賭けるぜ」

「じゃ、俺は裏。行きます!」

健が指先でコインを弾く。銀色の硬貨が眩しい光を身に纏い、回転しながら雲一つ無い青空へと舞い上がる。
朋樹はコインの行方を追いながら、その美しい瞬間をいつまでも取っておきたいと思った。
だが同時にこれと同じ瞬間はもう二度と経験できないことも知っていた。
朋樹は眩しさに目を細めながら、心の中でシャッターを切った。蝉の声が鳴き止む。
やり場のない気持ちの記憶がまた一つ増えた。

コインは青空に吸い込まれる一歩手前で失速し、二人の間に落下して来た。
健はコインを右手でギュッと受け止めると、朋樹の鼻先に差し出した。
そして静かに指を開く・・・・コインには『100』の数字が刻まれていた。裏だ。

「やったあ!先輩と練習だあ!!」

飛び上がって喜ぶ健。

その前で朋樹は落胆した表情のまま頭を掻いた。

「あ〜あ、また一つ単位を落としたな・・・」
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